身体から安心を取り戻す:ポリヴェーガル理論によるセルフケア - 熊谷市「和鍼灸治療院」

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身体から安心を取り戻す:ポリヴェーガル理論によるセルフケア

2026年02月25日

1. はじめに:あなたの身体が伝えようとしていること

日々の生活の中で、理由のない不安に襲われたり、何もやる気が起きず体が鉛のように重く感じられたりすることはありませんか?そんな時、私たちはつい「自分の心が弱いからだ」「自分はどこか壊れているのではないか」と自分を責めてしまいがちです。

しかし、身体心理学とポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)の視点は、私たちに全く異なる、そして温かな答えを教えてくれます。あなたの神経系は壊れてなどいません。 今あなたが感じている不安や無気力、パニックといった症状は、あなたの身体が過酷な環境からあなたを守ろうとして、必死に「正しく適応」しようとした結果なのです。

この記事は、頭(思考)で自分をコントロールしようとするのではなく、身体の仕組みを理解し、身体を通じて安心感を取り戻していく「ボトムアップ」の歩みをサポートするために作りました。まずは、私たちの心身を支えている神経系の「3つの階層」が、進化の過程でどのように積み重なってきたのかを紐解いていきましょう。


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2. 神経系の「3つの階層」を知る

私たちの自律神経は、進化の過程で「古いものの上に新しいものが積み重なる」形で構成されています。私たちの身体は、安全を失うと新しい層から順に機能が低下し、より原始的な生存モードへと「退行」していく性質を持っています。
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◎階層(進化的順序) 
①状態の名前
②神経系が判断していること
③具体的な身体症状・感覚
④生存のための役割(意味)

◎第3層(最新:進化の新しい哺乳類)
①腹側迷走神経系(社会的関与)
②「安全」。つながっても大丈夫。
③穏やかな心拍、深い呼吸、柔らかな表情、心地よい交流。
④他者と協力し、休息と修復を行うための「社会生活モード」。

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◎第2層(中間:哺乳類)
①交感神経系(闘争・逃走)
②「危険」。動いて生き延びろ。
③動悸、過呼吸、焦り、不眠、筋肉の怒りや緊張。
④敵から逃げる、あるいは戦うための「エネルギー総動員モード」。

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◎第1層(最古:爬虫類以前)
①背側迷走神経系(シャットダウン)
②「生命の危機」。止まって耐えろ。
③虚脱、無気力、解離(現実感の喪失)、感覚の麻痺。
④逃げられない極限状態で、代謝を下げて痛みを逃がす「死んだふりモード」。

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これらの状態はどれも、私たちがその瞬間を生き延びるために必要だった「正しい反応」です。しかし、なぜ私たちは「今は大丈夫だ」と頭で理解していても、身体の反応を止めることができないのでしょうか。


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3. なぜ「理屈」では落ち着けないのか:ニューロセプションの仕組み

「落ち着こう」と自分に言い聞かせても、心臓のバクバクが止まらない......。そんな経験をしても、どうか自分を責めないでください。これは意志が弱いわけではなく、脳の奥深くで働く「ニューロセプション(Neuroception)」という仕組みの仕業なのです。


意識を介さない自動探知: ニューロセプションとは、スティーブン・ポージェス博士が提唱した概念で、私たちが「考える」よりもずっと速く、神経系が周囲を「安全か、危険か」と自動スキャンするプロセスです。

脳幹レベルでの処理: この探知は、思考を司る大脳皮質ではなく、より原始的な「脳幹や扁桃体」で行われます。理屈が届く前に、身体が先にサバイバルモードに入ってしまうのです。

「知覚」とのズレ: 私たちが意識的に「大丈夫だ」と捉える(知覚する)ことと、神経系が「怖い」と反応することは別次元の出来事です。自己否定感は、この「脳の階層間のズレ」から生まれます。

思考(トップダウン)で身体を押さえつけるのは、嵐の海を言葉だけで静めようとするようなものです。今の私たちに必要なのは、身体(ボトムアップ)から脳へ「もう安全だよ」という信号を直接届けることなのです。

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4. 実践:脳へ「安全信号」を送る5つのアプローチ

腹側迷走神経(安全の層)を活性化させ、神経系を「安心モード」に誘うための具体的なワークをご紹介します。

1. 呼吸:呼気を長くすること

 仕組み: 息を吐くとき、迷走神経が刺激されて心拍が自然に抑えられます。これをRSA(呼吸性洞性不整脈)と呼び、腹側迷走神経へ直接アクセスする有力な方法です。

 やり方: 4秒かけて鼻から吸い、8秒かけてゆっくりと口から吐き出します。「吐く」時間を長くとるほど、身体はリラックスへと向かいます。

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2. 声・ハミング:喉の振動

 仕組み: 声帯や咽頭は迷走神経と物理的に直結しています。声を出す振動は、内側から神経を優しくマッサージするような効果があります。

 やり方: 「んーーー」と低く、胸や喉に響くようにハミングをしてみましょう。その振動が心地よい「安全信号」として脳に伝わります。

3. 表情・眼:社会的関与システムの連動

 仕組み: 顔の筋肉や眼の動きは、腹側迷走神経と連動して「社会的関与システム」を形成しています。

 やり方: 鏡を見て自分の表情を緩めたり、ゆっくりと周囲の景色を眺めて「今、ここに脅威がないこと」を確認したりします。

4. グラウンディング:身体感覚への注意

 仕組み: 足の裏や皮膚の感覚(固有感覚)に意識を向けることで、神経系を「過去のトラウマ」や「未来の不安」から「今ここ」の物理的な現実へと引き戻します。

 やり方: 足の裏が地面に触れている感覚や、椅子に座っているお尻の重みを丁寧に感じ取ります。

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5. 共同調整(Co-regulation):安全な他者の活用

 仕組み: 私たちの神経系は他者の神経系と響き合います。安全な存在の声や表情に触れるだけで、自分の神経系も引き上げられていきます。

 やり方: 信頼できる人のそばにいたり、穏やかなトーンの声を聞いたりします。言葉を交わさなくても、「ただ共にいる」ことが最大のケアになります。

これらを通じて少しずつ「安全の貯金」を増やしていけますが、神経系が深く凍りついているときには、自分一人の力だけでは限界があるのも事実です。


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5. 専門的なケアという選択肢:鍼灸・整体の役割

セルフケアが届かない深いレベルの緊張に対し、鍼灸や整体などの手技療法は、生理学的なショートカット(近道)を描くことができます。

鍼刺激と抗炎症反応: 鍼による刺激は、迷走神経を介した抗炎症反応(コリン作動性抗炎症経路)を活性化させることが示されています。特に「耳介迷走神経刺激」は、脳へ直接「安全」のスイッチを入れるアプローチとして注目されています。

筋膜・固有感覚への介入: 整体によるアプローチは、筋膜(ファシア)や固有感覚に働きかけ、深部から神経系に安全信号を送ることができます。

「安全な接触」とオキシトシン: 専門家による適切で「安全な接触」を受けることは、幸福ホルモンであるオキシトシンの分泌を促し、腹側迷走神経を強力にサポートします。

施術者との共同調整: ポリヴェーガル理論において、施術者自身の神経系が穏やかに整っていることは、患者様が安心を取り戻すための必須条件です。整った神経系を持つ他者に身を委ねることで、神経系は「安全な状態」を再学習していきます。

施術を受けることは「甘え」ではなく、生理学的な必要性に基づいた「神経系の再教育」なのです。


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6. おわりに:安心への道は、今ここに

不安や苦しみの渦中にいる時は、出口がないように感じるかもしれません。しかし、あなたの身体は今この瞬間も、あなたを守るために、進化が授けてくれた機能を駆使して懸命に働き続けています。身体の仕組みを理解し、小さな「安全信号」を送り続けることで、神経系は必ず柔軟性を取り戻していきます。

焦る必要はありません。あなたの身体を「守ってくれている相棒」として捉え直し、今日から新しい対話を始めてみませんか。

今日から意識できる小さな一歩

「落ち着かなきゃ...」と焦る代わりに、ゆっくりと長く息を吐いてみる。

足の裏が地面を支えてくれている感覚を、10秒間だけ感じてみる。

「私の神経系は、今まで一生懸命私を守ってきてくれたんだね...」と労わりの言葉をかけてみる。

安心への道は、あなたの身体という入り口から始まっています。

当院はいつでも、その歩みをサポートしていきます。


自律神経を整えたい方はお気軽にご相談ください。
和鍼灸治療院
埼玉県熊谷市本石1-57

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